幽栖録

極私的備忘録

 その後読んだ本

『1968(下)』小熊英二 新耀社
けっこう時間がかかった。まあ文庫本10冊分くらいはありそうだ、というか著者もそんなことをあとがきで書いている。 おそらく、当時、何らかの形で関わった人間たちは「それだけではなかったんだが、、、」という感想を持つだろう。僕もそう思う。 まあ、しかし最大公約数としては、こういうところに落ち着くのだろう。 連合赤軍事件については、その特殊性が主要因だったという結論だが、それはちょっと違うと言いたいところだ。 ウーマンリブについては、まったく何も知らなかったので面白かった。
超訳 ニーチェの言葉』白取春彦 ディスカヴァー・トゥエンティワン
斉藤環が、ニーチェの毒=ニヒリズムみたいな書き方をしていたけれど、ニーチェの毒は、要するに彼の言う「高み」を目指さない人間、ニヒリズムに負けてしまった人間、当時の教会とそれに頼る人々=彼の見方からすると「弱虫なやつら」、をボロクソに非難しているところなんじゃないか、という気がする。その「ボロクソ」さは、また「弱虫なやつら」に対する彼独特の叱咤激励ではあるのだが。ニーチェは弱者に優しい。しかし、自分の弱い部分に負けてしまった人間、あるいはその弱さに居直ってしまった人間には、とことん厳しい。まあ、弱さは弱さとして受け入れながら(居直るのではなくて)、それでも生きてゆくという強さを持つやつが好きなんだな。
追記:もう一つ、ニーチェの毒の素は、生まれてきたことそのものには何も意味が無い、ということが彼の思想の大前提になっていること。この本には、そのことについては何も触れていない。