『本当は恐ろしい江戸時代』八幡和郎 ソフトバンク新書
まあ、内容は面白いが、このタイトルのネーミングはどうだろうか? 文章は、どう書けば読み手に品の無い文章と思わせるかという点で非常に参考になる。まあ、和辻哲郎なみの品を求めるのはもとから無理なのだろうが。『鎖国』をまた読みたいところだ。
江戸時代=鎖国がなければ、太平洋の島々からハワイ、カリフォルニア、あるいはオーストラリアあたりまで日本人が多数派になっていたのではなかろうか、というのはなるほどあったかも。明清時代の海禁政策が、結局、現代中国の遅れの大きな要因になっているだろうことを考えると、江戸時代の鎖国もまた同じように日本を相当に遅らせたんだろうな、確かに。
『ハバナの男』グレアム・グリーン 田中西二郎訳 選集第13巻 早川書房
"Our Man in Havana" Graham Greene, Penguin Classicsと一緒に、一節ごと交互に読み進むという作戦だったが、結局、それは最初の2章だけで、あとは翻訳版をそのまま終わりまで読んでしまった。なんとなく最初は凡庸な喜劇、中盤から終盤にかけてちょっとした悲劇になって最後は小じゃれた喜劇で終わる、という感じでしょうか。一気に読めたんで、それはそれで面白かったということなんだろうな。高円寺の古本屋で100円で購入したやつである。100円本を買い歩いて読むというのは良い作戦かもしれない。★★★
『背いて故郷』志水辰夫 講談社文庫
どうもダメな男というのにまったく共感できないんだな。『ゆきずりの街』と同じ、過剰に責任を負う男、あるいはただの自意識過剰な男が主人公(そしてもちろん女の方が強い)。で、彼が動き出したおかげで、それなりにうまくまとまっていた?事態が混乱し始める。と、最初の何分の一かを読み始めて思ったのだが、最後まで読むと、それはちょっと柏木に酷かな、という気にもなった。もっとも優子の立場から見れば、柏木が戻ってきたときに、また馬鹿が一人出てきちゃったよ、まいったわねぇ、どうして男ってこう馬鹿なのかしらねぇ、というところか。★★★
『はり100本』竹村文近 新潮新書
弟子の名前、土居由紀。
『世界金融危機 開いたパンドラ』滝田洋一 日経プレミアシリーズ
戦争が起こらないか、と望んでいたのはだれだっけ。恐慌が起これば、それはそれで面白いんじゃないか、とか思ってしまうのは私だけか。
『金融大崩壊 「アメリカ金融帝国」の終焉』水野和夫 NHK生活人新書
前の本が、いかにも新聞記者が書いたという事実関係を後追いでまとめたものであるのに対して、こちらはもう少し為になる。かなり抑制しているけれどかなり厳しいグリーンスパン批判があちこちに見られて面白い。で、これを読んでいるとグリーンスパンというのはとんでもない無責任男である、という印象になるな。
証券化したときのリスクをどう判定するか、という点で、要するに過去の事例に基づく貸し倒れ率のようなことしか考慮していなかったんだな、おそらく。であれば、証券化と、それを細切れにして他の証券化商品と混ぜ合わせることによってリスクが希薄化されるということになるのだが、実際に起きたことは、住宅価格バブルの崩壊であって、そもそものリスク評価の前提というか前提以前の事態というか、が崩れたのである。で、問題は、そのようなペテンのリスク評価=証券格付けに過ぎないことを知っていたやつが居る(はずだ)ということなんだな。
著者の予測
景気について:2011年くらいまで余震が続く(不良債権額が確定しない)。アメリカの不況は2013年あたりまでは続く。
100兆ドルの金融資産が今なお残っている(これだけのカネが余っている?)=どこへ投資されるか?=BRIC's、脱化石エネルギーへの投資?=実物投資(金融投資ではなく)
円高基調が続く(あるいは円高政策を取るべき)
先進国の財政政策が、その国経済に対して期待する効果をあげ得ない、という状況になった。
『歴史と外交』東郷和彦 講談社現代新書
戦後問題というか、いまだに、いわゆる左右が対立している問題について、わかりやすく論点を整理していて参考になる。
第一章:靖国神社、第二章:慰安婦問題、第三章:日韓関係、第四章:日台−日中関係、第五章:原爆投下、第六章:東京裁判。慰安婦問題、東京裁判(というより侵略戦争)については、まあいくつかの問題がごっちゃになっているんだな、ということがよくわかる。第二章3情報戦には勝たねばならない、の前後は、良かれと思って、しかし、まったく逆の効果を挙げているような行動を取っている一部熱血漢?の人々に熟読して欲しいものである。職業外交官というか、優秀な官僚というのはなるほどこういう性格なんだろうな、というのが伺われて、それもまた参考になる。
『残虐記』桐野夏生 新潮文庫
なるほど「私のことはゆるしてくれなくてもいいです。私も先生をゆるさないとおもいます。」というフレーズが、独特の面白み、あるいは読者の側の想像力を喚起する力を確かに持っている。齊藤環の解説が良い。★★★
『狼でもなく』志水辰夫 徳間文庫
主人公は、確かに馬鹿といえば馬鹿である。しかし、魅力的である。★★★
『オンリィ・イエスタデイ』志水辰夫 新潮文庫
主人公は相変わらず馬鹿である。対する女もまた馬鹿で、そのやりとりがちょっとユーモラスでもある。60年代の日活アクション映画を思い出させる。★★★