幽栖録

極私的備忘録

 その後読んだ本

『世界は分けてもわからない』福岡伸一 講談社現代新書
タイトルから想像する内容とはちょっと違ったな。しかし、もちろん相変わらずの福岡スタイルで良い。
『差別感情の哲学』中島義道 講談社
要するにここで著者が言いたいことは、「すべての行為に差別感情がこびりついている」ことに自覚的であれ、ということだ。あるいは、「自己批判精神」と「繊細な精神」をもって生きよ、ということ。終わりのほうで「誠実に生きる」ということについて自問自答しているけれど、僕は「誠実性」最優先だな。その「誠実さ」が、彼(私)以外の人間にとって迷惑千万なものならば、結局、それは人の世で裁かれるべきことだ。それをきちんと裁く世の中にならなければいけない、という問題だ。眼に見える異形のものに対する差別感情というのは、しかしその異形と接する機会が多くなれば、自然と慣れてしまうんじゃないかというのが僕の経験だけれど。そうではない、観念的な差別、というのは個人レベルではなかったことにしちゃえばよい、という話なんだが、現実に種々の差別が行われている(就職、結婚などで)ならば、やはりそれは告発し続けなければならない。その際、告発する側には正義があると認めるけれど、しかしそこにやはり自己批判精神と繊細な精神がなければ、正義が暴走してしまうことはままある。差別については小林よしのりあたりがきちんと突き詰めて考えてくれるかなと期待したこともあったんだが、彼は実に安易な方向に行ってしまった。残念ではある。

by niconico