幽栖録

極私的備忘録

 その後、読んだ本

『公平・無料・国営を貫く英国の医療改革』武内和久・竹之下泰志 集英社新書
英国の医療制度改革を紹介した本。英国の医者というのは、基本的に皆、公務員だったのね。報酬制度。日本でも医療報酬制度を、病院にかかる患者が少なくなればなるほど医者にとっては効率よく収入が得られることになる、というシステムにすることは可能なのだろうか。

イスラムの怒り』内藤正典 集英社新書
イスラム教徒は何に怒るのか。
イスラム社会では物乞いに金を渡しても、彼らは「ありがとう」とは言わない。金を持っている「私」に善行を積ませてやっているわけだから、感謝などする必要がないのである」というのは、よく言われることだが、これを読んだときに中島義道(差別感情の哲学)の「(自分が)恵まれていることを感謝するのではなく、負い目として捉えなければならない」という言葉を思い出した。
もう一つ、ここに記録しておきたい話。著者が学生を連れて街を歩いていたとき、近くの家の女、子どもがみやげ物を売りつけにまとわりついてきた。著者は手で振り払う。「そのとき、突然、貧血で一人の女子学生が倒れてしまった。その瞬間、群がっていた物売りの一団は、売り物の人形を放り出し、彼女にかけ寄ってきた。母親らしき女性は、女子学生を抱きかかえ、娘たちに水とタオルを持ってくるよう命じた。みなで彼女の介抱を始めたのである。ほどなく彼女は意識を取り戻した。周囲の人たちはみな、良かった良かったとうれしそうに笑っている。そして、礼の金を受け取ることをきっぱりと断った。土産の人形を買えとさえ言わない。」
最後の「ムスリムはなぜオバマを支持したのか」で示されているオバマに対する懸念は、ちょっと注目しておきたいところ。
イスラム教というのは、ある程度知ると、なかなか合理的な宗教に思えてくるんだな。

by niconico