幽栖録

極私的備忘録

 「イエスという経験」大貫隆 岩波書店

読み終わると、それなりに面白かった、と思えるが、読んでいる最中は、だからインテリってダメなんじゃないの、というのが感想である。要するに、著者は、どういう人を読者として想定してこれを書いたのだろうか、というのが素朴な疑問だ。田川健三(キリスト教思想への招待)は、想定している読者が非常に明瞭で、宗教などと言う胡散臭いものと日頃感じている普通の人であろうとわかるのだが、これ(大貫隆)は新約聖書学者、真面目なクリスチャン、あたりに読んでもらおうと思っているのかな。少なくとも僕のような、興味本位に、聖書をつまみ読みしたり、イエスの思想に関するものを読んでいるものを相手にしてはいなさそうだ。そういう人にとっては、初めのイエスの「神の国」イメージを論じている箇所(もっとも全編コレと言えなくもない)と、終わりの4ページくらいを読めば一応満足。
個人的な好みとしては、荒井献、八木誠一の方がとっつきやすいし面白い。