幽栖録

極私的備忘録

 尖閣諸島

今回の尖閣諸島をめぐる問題を、とりあえず整理しておこう。
なるほど盗人猛々しいとはこういうことを言うのか、ということをわからせてくれたのが中国の態度。
人質4人取られた直後という実に情けないタイミングで船長を釈放してしまった。(圧力に屈した、としか受け取られない)
釈放を発表した検察のこれまた実にバカなコメント(政治情勢?日中関係?)。これは、しかし上からの指示に不承不承従った現場の、ある種、抵抗を示したコメントと私は思う=法律的にではなく、政治判断が働いているということの示唆。しかし、仙石氏はじめ主要閣僚は、「(政治判断ではなく法律的判断として)これ以上の拘留必要なしと検察が独自に判断したのだから司法の判断を尊重します」と言うことで、中国の圧力とは無関係(諸外国を含め誰もそうとは思っていないのだが)だと強弁せざるを得ない。(しかし、あの発言をした検察官は国益を害したし、言葉通りに受け取れば、ある種の越権行為なんで、即刻、処分すべきなんじゃないか?)
政治判断が働いたとしか思えないが、しかしこれが中国側との何らかの交渉の結果ではなく、日本側が一方的に「とりあえず船長返せばおとなしくなってくれるだろう」程度の思い込みで実施した可能性が大。
というところか。

そこで、この政治判断が「正しかった」とすれば、それは以下の2点を明らかにしているように思う。
・日本政府自身が、自らの外交交渉能力のなさを自覚している=突然の日本人逮捕、というのは要するに中国側がこれから交渉するための材料を先ず確保した、ということのように見えたのだが。日本側はハナから交渉に勝ち目なし(交渉すれば尖閣諸島問題を領土問題と認めてしまうまで中国にやられちゃう)と見て、とにかく返すから終わりにしようよ、って感じにしか見えなかったな、どう見ても。
レアアースの禁輸処置一つで、日本経済がガタガタになる可能性があるほど、実は現在の日本の経済(あるいは産業構造)は脆弱である。

この一件は、中国、日本双方にとってマイナスである。
先ず一番大きいのは、日本国内に反中国意識、あるいは中国警戒論者を確実に増やした。中国というのは、自分の意見を通すためには何をやりだすかわからない異常な国であるという認識が広まったな。これについては、日本国内だけでなく、周辺諸国の少なくとも政府外交関係者が改めて上記の中国のやり方を確認しただろう。これは将来の日中関係にじわじわと影響してくる。
さらに日本にとって不幸なのは、菅以上のバカである安部晋三レベルの政治家がまたぞろ力を得る可能性を作ってしまった、という点だな。

「これでは日本が滅びる」というとき、それはいったい何を意味するだろう。中国が日本本土を占領し、日本人を皆殺しにする?まあ、1000年ほど前なら十分ありえた。(まあ、100年前には、中国ではなくアメリカ、ロシアが日本を植民地にするという恐怖感で日本は動いていたんだからな)。しかし、現代ではそれはありえない。今のところアメリカはもうちょっとスマートなやり方で日本をて手なずけているわけだが、アメリカの51番目の州として存在するのと、中国のいくつめかの自治区になるのとどちらが日本国民にとって幸せか、というなんとも情けない選択になるのか。どちらにしても、国民の実質的な経済レベルはさらにボロボロになるだろうか。そう簡単にボロボロとなるとも思えないが、切り捨てられる部分が大きくなりそうなのはなんとなく感じる。一部の要領の良いヤツは、アメリカだろうと中国だろうと、うまく立ち回るだろうな。

オイルショックは日本に石油備蓄の必要性と省エネ技術の発展をもたらした。今回の一件は、先ず日本企業の中国から東南アジア(インドネシアベトナム等)南アジア(インド、バングラデシュ)への移動を加速させるのは間違いない。あとはレアメタル問題かね。これは技術で解決できるか。やはり輸出中心の産業構造を内需である程度まわるようにする必要がある。これには様々な規制緩和が不可欠。
日本は、(中国を除いた)アジア諸国との協調関係をさらに進める必要がある、とは誰でも考えるな。特に、インド、ベトナム、フィリピンなど。モンゴル、チベット中央アジアイスラム国ともより密接な関係を築く必要もありそうだ。要するに中国包囲網を作り出す必要がある。(アメリカが東アジア共同体的発想に反発する以上に、中国は過敏になってくるだろうが)
まあ、思いつくのはこのくらいか。

過激なやり方は、中国内の民族分離独立派への肩入れかな。これはまあフィクションの世界へ入って行くが、面白そうではある。ナントカ機関とかを潜入させて、独立運動を支援する。

追記:「以下の2点を明らか」とすれば、そもそも逮捕したのが判断ミスということになるような気がしてきたな。
追記2:例えばこんな感じ。「おはようございます。朝から相変わらずの中国報道、毎日こればっかりで、気分が滅入ります。これも中国の戦略なのか。というか、自分に愛国心のようなものがあったのに驚く。@kimura_kazuhisa」(強調、引用者)。