幽栖録

極私的備忘録

 上京ものがたり 西原理恵子 小学館

西原理恵子のファンである。傑作。美しい美しい青春のものがたり。
だがこれを美しいと思って読むのは、もう年をとった老年かもしれない。
(ちょっと思いつきを追加)
勝ち組、負け組という分け方をしてしまえば、勝ち組みである西原理恵子のこのものがたりが、しかし美しいのは、一見矛盾していながら、にもかかわらず不可分である二つのことを自覚的に表現しているからだ。
1.私は、(結局のところ)1人で生きて行くほかない。
2.私は、数多くの(私以外の)人々に助けられることによって、生かされている。
地方から出てきた、何物かであろうとしながらしかし何物でもない私が、1.に気が付き、そして2.であることに感謝し、そしていつのまにか自分が、人を助けられる立場に立っている何物かになっていることを知り、そのことに素直に喜びを見出す、そういう青春の、子供から大人になって行く時代のものがたりである。