幽栖録

極私的備忘録

 「水」戦争の世紀 モード・バウロウ トニー・クラーク 集英社新書

三分の二ほど読んでやめてしまった。反グローバリズムの書である。世界各地で、水(上水道)供給がグローバル企業に委託=民営化されている。営利企業への委託が、無条件に悪いこと、とされているような論調である。企業性悪説が前提となっているようだが、まあ事実多くの問題が生じているのだろう。しかし、民営化が提案されるには、それだけの個別具体的な事情がそれぞれの場合にあるはずだ。問題はそのような事情の解決でなければならないが、著者たちは、その点には一切触れていない、ただグローバル企業に委託されてあちこちで問題が起こっている、と並べ立て、だから民営化はダメなんだ、と言っているだけだ。いわゆる暴力団の存在は望ましいことではない、だからその存在は徹底的に否定されなければならない、という考えは、一見正しい。しかし本当の問題点は、そのような暴力団(ヤクザ、マフィアと呼ばれる組織)に、何故、人材?が供給され続けているのか、という点にあるはずだ。テロルの問題も全く同様なのは言うまでも無い。そういう意味で、反グローバリズムの運動も、ブッシュの愚行も結局は同じだ、というのがこの本を(三分の二だけ)読んだ感想。