幽栖録

極私的備忘録

「新・戦争論」 伊藤憲一 新潮新書
私が思っていたこととほぼ同様の主張である。ひとつは、もう「戦争」は起きないだろう、もうひとつは、起こるのは「紛争」あるいは「犯罪」である、ということ。いまだに「非武装中立」的な平和を言う人もいるが、例えば平和国家、あるいは平和ボケとまで言われる日本に武装組織は必要ないか、といえば、もちろんそんなことは無い。日本は、主要な街の主要な場所に、武装した人が常駐している場「交番」が設置された、世界でも有数の警察国家である。それによって「安全」が保たれている。世界がどんなに平和になろうと、あるいは世界が平和であるためには、そのような暴力装置がやはり必要となるだろう。では、そのような暴力を行使する力を誰に与えるか、あるいは誰に委託するかということになる。保安官として米国を選ぶのは、日本にとって利益とリスクのどちらが大きいだろうか。国連軍にその役割を委託しようとすれば、日本が自らその主要な役割を担うぐらいの気持ちがないと意味が無いのではないか、という気もする。著者は、この点では米国との協調というか米国への依存にやや重きを置きすぎているような印象を受ける。

niconico