幽栖録

極私的備忘録

六月大歌舞伎 第三部

有吉佐和子
齋藤雅文 演出
坂東玉三郎 演出
  ふるあめりかに袖はぬらさじ(ふるあめりかにそではぬらさじ)
 芸者お園     坂東玉三郎
 通辞藤吉     中村福之助
 遊女亀遊     河合雪之丞
 旦那駿河屋    片岡松之助
 遣り手お咲    中村歌女之丞(かめのじょう)
 浪人客佐藤    中村吉之丞
 唐人口マリア   伊藤みどり
 思誠塾小山    田口守
 思誠塾岡田    喜多村緑郎(きたむらろくろう)
 岩亀楼主人    中村鴈治郎
歌舞伎人より
「哀感あふれる演劇界屈指の名作
 時は幕末、開港間もない横浜の遊廓岩亀楼。気風がよく三味線の名手でもある芸者のお園は、病に伏せる旧知の遊女亀遊を見舞いに行き、医者を目指し留学を夢見る通訳の藤吉との仲に気づきます。ある日、岩亀楼にやってきたアメリカ人イルウスは、亀遊に一目惚れして、藤吉に身請け話の通訳をさせます。金に目の眩んだ岩亀楼の主人が身請けを承知すると、藤吉との恋に絶望した亀遊は自害してしまいます。ところが数日後、その死を“万金を積まれてもアメリカ人への身請けを断り自害した攘夷女郎”と事実を歪曲して伝える瓦版が。「露をだにいとふ倭の女郎花ふるあめりかに袖はぬらさじ」という嘘の辞世の句まで添えられた瓦版のおかげで、攘夷派の志士たちの聖地となった岩亀楼。やがて亀遊の死の真実を知るお園までもが、三味線を手に亀遊の物語の語り部となってゆき…。
 戦後を代表する流行作家・有吉佐和子によって、横浜に実在した遊廓を舞台に描かれた本作は、演劇界屈指の名作として、昭和47(1972)年の初演以来、数々の名優たちによって上演されてきました。淡い恋模様をみせる亀遊と藤吉、抜け目のない様子が笑いを誘う岩亀楼主人、そして、亀遊の悲劇をとうとうと調子よく語るお園の悲哀…。賑やかな廓で繰り広げられる、現代にも通じる普遍性をもった哀感あふれる人間ドラマをご堪能ください。」
入場前に歌舞伎蕎麦で掻揚そば。