幽栖録

極私的備忘録

 その後、読んだ本

『東南アジア紀行(下)』梅棹忠夫 中公文庫
50年前に書かれた、東南アジア紀行。“三丁目の夕日”の時代にすでにこうやって学術調査団が出ていたというのが良い。東南アジアは、どれほど変わったのか、KLとかバンコクとか、ゆっくり滞在したいな。
『知性の限界』高橋昌一郎 講談社現代新書
大筋では、個別にはまあ聞いたことがある話をまとめて読んだ、という感じかな。(僕にとっては)新しい知識ももちろんあって、面白かったな。ちくま学芸文庫のファイヤーアーベントのやつ(村上陽一郎訳)は読んでみようか。
あとがきに紹介されていた大槻教授の批判は、教授の面目躍如みたいな批判で良いね。いわゆるニューサイエンス的なものやカルトへ繋げてしまう単純な人が出てくる可能性はあるな。
『日本社会の歴史』中・下 網野善彦 岩波新書
最後の方に書かれている今でも使われている経済・商業関係の用語「市場、取引、相場、手形、切手、株式、寄付、大引などの言葉には翻訳後が全く無く、(日本の)古代・中世にまでさかのぼる在来の語である」というのは、なるほどと思わせるな。江戸時代以前に百姓と呼ばれていた人たちは決して農業だけに従事していたわけではなく、いろいろな産業に従事していたんだが、明治期に一様に百姓=農民(と戸籍に書かれて)とされてしまった。それがもとで、日本社会の歴史について、近年の一時期、ちょっと間違った思い込みが支配してしまった、という著者の主張。
『森林異変』
これは読んでよかった。日本の林業がダメになったのは安い外材が入ってきたからだ、というのは実質的に嘘、という話からはじまって、日本の林業というのが実に不思議な産業だったということがわかる。従事者が4万7千人(だったかな)で、しかし日本の森林面積というのはそこそこあるからなぁ。絶滅しても良い産業とはとても言えないと思うし。